こんにちは、橘です。
先日男友達と飲んでいたところ、
「今年は女性に対する理想のハードルを下げる」
と宣言したので最低条件をきいてみたところ、
「麻生久美子と吉高由里子と宮崎あおいを
足して3で割ったようなCカップ以上の巨乳」
と中学生男子みたいなことをのたまっていました。
男も30過ぎて独身だとこじらせるんだな、
と思った瞬間でした。どこが下がってるんだ。
ところで“こじらせ”の定義ってなんでしょうね。
前回あれだけハイテンションにこじらせ女子を語っておいてなんですが、
モテない=こじらせ、ではないと思うのですよ。
じっさい、その男友達もそこそこイケメンだし、
物腰やわらかくておしゃれで、それなりにモテてはいるはず。
だけどそこはかとなく薫るこじらせ臭。
そんなことを考えながら本を読んでいたら、ひとり、
とっても魅力的だと思っていたけど、
じつはこじれていたんじゃないか、
という男の人をひとり見つけました。
それがニシノユキヒコです。
見た目がよくて、セックスもじょうずで、
甘え上手で、飄々としていて、
でもどこか孤独の影のある男。ニシノ。
女の人にはとにかくやさしく、
たくさんの女の人の気配があって、
とにもかくにもよくモテるのに、
なぜか最後は必ずふられてしまう男。ニシノ。
実写映画で竹野内豊が演じると知ったときは、
それだ!と前回の石原さとみ以上に膝をうちましたよ。
中学時代も新卒時代も40過ぎてからも
変わらずずっと許されモテ続ける、にくまれない、
そんな出来すぎた男、現実にいるわけないじゃん!
と思っていたけど、いましたよ。竹野内なら、アリだ。
原作小説をはじめて読んだときは、
とても静謐でうつくしい恋愛小説だなあ、
と思ったのですが、
ひさしぶりに読み直してみたら、
けっきょく誰のことも愛せない、愛することを信じられない、
だけど愛を求めずにいられない彼がずいぶんとこじれている、
ような気がしてきたのです。
彼はもしかしたら、とても美しいものを求めすぎて、
近くにあるものに気づけなかった、
受け入れることができなかった、
……のかもしれない。
そしてそのこじれが彼を、うんと魅力的にしているのもたしか。
そうおもうと、こじれていることは一概にも、
悪いことじゃないのかもしれないなあ、なんて思うのです。
いや、まあ、ずいぶんと悪い男ですけどね、ニシノ。
つきあってみたいけど結婚したい男ではないです。
だからこそ女性たちはみな、こぞって、
彼のもとから立ち去るのでしょうけれど。
情に流されず潔く彼を手放せる女性たちに
心の底から感服するしだい。
でもまあ、そこで重たくなっていく女だと、
きっとニシノのほうから逃げていってしまうんだろうなあ。
ああ、ままならない!
そんな、十のニシノの恋と冒険。ぜひおためしあれ。
『ニシノユキヒコの恋と冒険』
川上弘美 新潮文庫 438円(税別)