こんにちは、橘です。
昔、雑誌編集部で働いていたとき、
終電も越え、朝も近づき、それでも仕事が終わらず、
「私はいま何のために何をしとんのじゃ……」
とうなだれていた日がありました。
が、それから小一時間後、
企画がどうにか形になって達成感に満ちたとき、
「ああ……私はきっとこの瞬間のために働いているんだなあ」
と奇妙な感慨にふけったことを覚えております。
たぶん、人生の99パーセントはしんどい。
でもその、持続しない1パーセントの喜びのために、
私は働いているんだな、と。
なんて、いきなり自分語りではじめてすみません。橘です。
酔ってるわけじゃなく、
今回ご紹介する本『続・こころのふしぎ なぜ?どうして?』
を読んでそのことをふと思い出したのです。
ちなみに続とありますが、
わたし自身、この1冊しか読んでいないですし、
前作を知らない方も無問題。
コンセプトはどちらも同じですが、どちらから読んでも大丈夫なはず。
この本、わたしも上司からすすめられました。
なぜすすめられたかというと、
休日のたび、ウェディングパーティーのメッカ・
白金台の事務所に呼び出されていたわたしが
幸せそうな若人たちを見るにつけ羨望のまなざしを向けていたからです。
「結婚が幸せとは限らないぞ!」という上司なりの励ましと警鐘でしょうが、
わたしは結婚をうらやんでいたというよりも、
爽やかな青空の休日になにしてんだろうと己の境遇と比較していただけです。
以来、すっかり「橘は結婚したくてたまらない」キャラとして
まわりに吹聴するようになったので、とても勘弁してほしい……。
(いや、まちがってはいないけど。心底うらやましかったけど)。
それはさておき、この本は要するに、
「幸せってなんだろう?」ということをはじめ、
「自分ってなに?」「ウソはだめでも、どうして冗談はいいの?」
「がんばれって、何をどうがんばったらいいの?」
というような「心」にまつわる素朴な疑問を、
子供たちに伝える目的でわかりやすく解説したもの。
だがしかし、上司がわたしにすすめたように、
大人にこそ読んでほしいQ&Aが満載なのです。
まあ、あのね、「すきな人とけっこんしたら、しあわせになれる?」
というくだりも、もちろんいろいろグサッときたんですけどね、
それよりはっとしたのは「ゆめをかなえたらしあわせになるの?」というあたり。
もちろん、幸せ。でもその幸せはどうやらずっとは続かないようだよ、
というところをマンガと文章で教えてくれているその流れは、
冒頭のわたしの回顧につながっていたりして、
なかなか考えさせられるものでした。
幸せなんて、桃源郷のようなもの。
絶対値なんてないから、「あたりまえ」のレベルがあがれば、
もっともっと上の幸せがほしくなる。
持続できないからこそ、いつまでも求めてしまうけれど、
じゃあ自分にとって「幸せ」ってなんだろう?
何がどうなれば満足なんだろう?
それがわかっていないと、この本が教えてくれるように
幸せは「きけん」なものになってしまう。
いやはや、
子供向け、親子で読んでほしい、というコンセプトのくせに
決して「きれいごと」は言わない、
なかなか怖い本なのです。
「がんばれば夢は叶うよ!」とか
「ナンバーワンよりオンリーワンよ!」みたいな おためごかしもありません。
「こうかいしていることがあるんだけど、もう、やり直せないよね?」
という疑問には、
「やり直せません。ぜったいに、やり直せません。」と答えていますしね。
でもだからといって、読む人は絶望に突き落とされるのか?
そうではありません。
ごまかしのきれいごとは、結果的に、自分を追い詰めるだけだけど、
思い通りにならない現実や理不尽なできごとも、
しっかり向かい合っていけば根っこに「きれい」なものが必ずあると、
ちゃんと見せてくれるのです。
でもその「きれい」にたどりつくには、
自分でちゃんと考えなくちゃいけないし、
決めなきゃいけない。
そんな「余地」を私たちに与えてくれる。
……むずかしい! そしてとても、厳しい!
だけど自分に子供がいたら絶対読ませたいし、
毎日をがんばっている大人の友達にもおすすめしたい。
なにより自分が、くりかえし読みたい。
そんな一冊なのでした。
『続・こころのふしぎ なぜ?どうして?』
大野正人/原案・執筆
高橋書店 900円(税別)
※ちなみに写真は、もうどこで撮っていいやらわからないので、
私の「幸せな瞬間」と一緒に撮ってみました。
すげーどうでもいいです。