がんばるのは大事だけど、
がんばりどころを間違えてはいけないなあ、
とか思ってしみじみしている橘です。こんにちは。
だいたい人が初心にかえる的な話をはじめたときは
疲れているか病んでいるかどちらかだと思うのですが、
ご多分に漏れず疲れています。
そして去年のコラムを見たら、同じ時期にやっぱり、
がんばるとかがんばらないとかいう話を綴ってました。
1年たってまるで成長していないということですね。
きっと来年も同じことを言っていると思います。
でもいいの。最近とっても勇気とパワーをもらったから!
がんばろうって決めたんだもん!
みたいなテンションで今回紹介するのは
柚希礼音さんの『夢をかなえるために、私がやってきた5つのこと』。
宝塚の元トップスターによる、退団後初エッセイです。
ちょうどこの本を読んだころは、
「まじ眠いわー 昨日も2時間しか寝れてないわー」
と内なるミサワが発動しかけるくらい忙しかったのですが、
なんの心構えもなく開いたせいか、
うっかり何度も涙をにじませる羽目になりました。
なんていうか、
「わたし今、なんのために頑張ってるんだろう」とか
思うときありません?
やるしかないからやってるんだけど、
走り続けていることになにか意味があるのかしらん、って。
とくに忙しすぎていろんなことがバーストしてるときって、
ミスも多いし、抜けも多いし、思わぬポカはやらかすし、
ってそれは私だけかもしれませんが、
充実してうまいこと回っていればいいんですが
許容量をこえるととたんに歯車がずれて軋みだす。
そんなときにこの本を読んで、
すごく、すごーーく救われてしまったのでした。
もちろん柚希さんはスゴい人です。
入団後11年という驚きの速さでトップスターにのぼりつめ、
単独ライブで武道館を満席にし、
退団の際には最上最多のお見送りファンが押し寄せた伝説の人。
だけどこの本に書かれている柚希さんのスゴさはそんな結果ではなくて、
壁にぶつかるたびに、ひとつひとつ自分のだめなところを客観視して、
自分のいいところもだめなところも丸ごと受け入れ、
その壁を乗り越え続けてきたこと。
「自信満々だったら、成長できなかった」と柚希さんは言います。
「自分の未熟なところは認めたくないものです。
でもそれを認めないことには、前に進めません」と。
細かいエピソードは割愛しますが、
その姿勢はどれも特別なことではなく、
後輩に対して柚希さんがめざしていたという
「遠いようで近い人」というのをまさに体現したような本でした。
そのままでいいんだよ、でもなく、
もっと頑張りなさい、でもなく、
いまのまま頑張ってて大丈夫だからもう一歩ふみだしてみようよ、
と、そっと背中を押してくれるエッセイです。
でもね! あとね!
才能のあるひとほどたゆまぬ努力を人に見せず続けてる、
ということもまた思い知らされて、
わたしごときがうだうだ言ってる場合じゃねーや、とも思いましたよ。
あたりまえのことを受け入れて頑張り続ける、
それができるからこの人スターなんだ!と。
十六年がんばってもまだ足りない。
そんなふうにまだまだ高みに向かっていこうとする柚希さん。
読み終わったときには、
そんな彼女のすっかりファンになってしまったのでした。
いやー。舞台みにいきたいなー!
宝塚時代を見てみたかったなー!
『夢をかなえるために、私がやってきた5つのこと』
柚希礼音 KADOKAWA 1300円
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