こんにちは、橘です。
突然ですが、週末弾丸で台湾に行ってきました。
というのも先々月あたり、現地に赴任している友人から
「ねえ、来ないの?」
というメールが前触れもなく届きまして。
「お……おう、行くよ! ちょうど会いたいと思ってたんだよね! 今月行っちゃおっかな!」
「いや今月はわたしが無理」
みたいなやりとりを交わし、翌日にはチケットをとったのでした。
多忙自慢をするわけじゃないですが、
このくそ忙しい年末に締め切りぶっちぎり案件もたまりまくってんのに台湾なんか行ってどうすんだしかもそんなドツンデレメールよこすとかおまえは私の彼女か!
みたいな心境ではあったのですが、結果的に行ってよかった。
むしろわたしが救われた。
ひたすらしゃべって、食べて、しゃべって、食べてのくりかえしだったのですが、
楽しかったのなんのって!
これまで女同士の関係をくさすような本を
いくつか紹介してきましたが、
基本的にわたしは「女友達バンザイ\(^o^)/」の人。
友達って「いまこのタイミングで確実に必要な相手」っていうのがいて、
急接近したり、ときどき疎遠になったりしながら
確実に紡がれていく関係もあると思うのです。
友達@台湾はそういう意味で、
互いに必要とするタイミングがいつも近かったりして、
べったりはしないけど通じる相手としてとても大事な存在だなあと思います。
って、別にそんな女友達ののろけをしたいわけではなく、
一応、これも前フリです(長いけど)。
今回ご紹介する奥田英朗さんの新刊『ナオミとカナコ』は
そんな互いを必要としてしまったがゆえに犯罪に手を染めた
唯一無二の親友同士を描いた小説だからです。
直美と加奈子は大学時代からの親友同士。
気が合って、お互いに大好きで、加奈子が結婚しても関係は変わらず、
生活リズムや価値観が多少ずれることはあってもずっと仲良し。
ですがあるとき直美は、加奈子が夫から激しいDVを受けていることを知るのです。
夫に怯え、逃げ出せずに縮こまる加奈子に直美が提案するのが
「夫のクリアランス・プラン」。
これは殺害ではない。ただ「排除」するだけなのだという二人には、
罪悪感もうしろめたさもありません。
綿密に計画を練り上げ実行に向かっていきます。
その犯罪計画の立案・実行過程や、おとずれる数々のピンチ。
そして実行後の二人が追い詰められていく様に、
ページを繰る手が止まらず一気読み。
いかなる理由があろうとも人を殺した彼女たちは「悪」のはずなのに、
手を取り合い逃げる彼女たちにどこか「つかまらないで」と祈ってしまう。
それは加奈子の受けた痛みや屈辱、
そして直子が抱いた義憤にどこか共感してしまうからかもしれません。
たとえ、それが身勝手な言い分で間違っていると知っていても、
彼女たちの心の流れがどこか理解できてしまうから。
わたしだったらどうするかな〜。
と、考えずにはおられなかったのも一因でしょう。
大好きで、大事で、かけがえのない友達が、
理不尽な暴力にさらされていたら。
「警察に捕まったところで出所したら私も家族も殺される」
そんなふうに友達が逃げることを拒み続けたら。
実際、国外逃亡でもしない限り「完全に逃げる」なんてできません。
警察や弁護士や周囲がどれだけ管理しても、
殺されるときは殺される。相手が自己保身をはかるとは限らない。
そんな友達に、何ができるだろう?
自分がそんな現実に直面したら、どうするだろう?
どう転んでも後悔しかないのなら、共犯の道を選ぶ。
それは究極の愛で、もっとも美しい友情なのかもしれません。
正義か悪か、そんなことは彼女たちの前ではきっと無意味。
みなさんならどうしますか?
友達のために、人を殺せますか?
サスペンスであると同時に、
そんなことをぐるぐる考えさせられる友情小説でもあったのでした。
答えは全然、見つかりません。
『ナオミとカナコ』奥田英朗
幻冬舎 1700円(税抜