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心のデトックス読書のススメ/うちは大丈夫、なんて思っている人が危ない!『真壁家の相続』

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親戚ってほんと厄介ですよねえ……。

と、自他いろんなケースを思い浮かべながら
ため息をついてみる橘です。こんにちは。

今回ご紹介するのは朱野帰子さんの『真壁家の相続』。
タイトルだけで「うわあ、揉めそう」って感じですよね。
でも「○○家」とあるからって、なんかこう二時間サスペンスで
血みどろの争いが起きるような、そんな大富豪の話じゃありません。
町でお米売ってたおじいちゃんが死んじゃって、
その子供家族が四世帯集まった。それだけの話です。
そんなミニマムな話でも揉めるのが相続。
水面下の澱(おり)が噴出するのが親戚。

はい。いま、「うちは違う」と思った人。

「うちの家族、ほんっと仲良しなんですよ。
特に母はお人好しで、自分から遺産を譲っちゃうんじゃないかって、心配になるくらい」

とかなんとか思った人、手をあげて。
そんな、この小説に出てくる某女子みたいなことを思った人には、
謎の男・植田さんの言葉を贈りましょう。

〈君は、自分の家だけはよそと違うと思っているんだろう。
うちには善い人しかいないって思い込んでる。
だから団結とか絆とかよくわからない、口当たりだけはいい、
存在してるのかどうかわからないものばかり信じてるんだ。〉

むしろ仲がいいからこそ。
思い出が濃密だからこそ。
こじれて揉めることもある。
そんなことを痛感せざるを得なかった主人公・りんちゃんの物語を
みなさまにも是非堪能していただきたいと思います。
ちりばめられた鋭い格言に、心がぴりぴりきますよ!

主人公は法律を学ぶ大学生のりん。
父親は失踪中。母親は祖父(母にとっての義父)の近くに住んで介護中。
その祖父が亡くなったと聞いて駆けつけて見れば、
なんと祖父は、隠し子だという男と同居していたのが発覚。
そして集まったのは祖父の、りん父を除く三人の子供たち。
独身の長女に、一人娘と妻を持つ長男。事実婚の次女。
財産といえばわずかのお金と実家の土地。
急な死のため、遺言書もなし。さてはてどう分配する……?

というのがあらすじです。

家族・親戚だけでなく、友達もふくめ、
人間関係で揉める一番の原因ってなにかなーって考えたときに、
「ふつう」の基準がそれぞれ違うことじゃないかなって思います。

「えっ、普通こうするでしょ? なんで!?」
とか
「えっ、普通これはしないよね!? 信じられない!」
みたいなことが、たいてい人によってズレている。

「いやいや、お母さんがずっと介護してたんだから
普通はその分、考慮して分配するでしょ!」
とか、
「どんな状況であろうと法律に従って分配するのが当たり前でしょ。
権利があるんだから主張するのは普通のこと!」
とか。

相続ってたぶんそういうモラルの境界線がちがう、ってことが、
がっつり浮き彫りになりやすいんだと思うんですよね。
そのズレが、「まあそう言いたくなる気持ちはわかるよね〜」という
多少のことであればすりあわせはできるけど、
「えっ、そんな考え方してたの!?」みたいな大きさだと、なかなか揉める。

「これまでの性格見ててわかんなかったのか」「準備しとけよ」
と言う人もいるでしょうが、
欲が前面に出てくる事態ってそうはないですからね。
多少のことなら「なんだこいつ」と思いながらも
素知らぬ顔してつきあい続けるのが大人というもの。
たいていの人は、自分の常識=普通だと思ってますからね。
「まさかそんなこと言ってくるとは」となるのが、まあ、大抵でしょう。

そして親戚同士、「険悪」でないにしても、
そうした水面下の「なんだこいつ」は案外、つもりつもっていたりする。
平時は忘れていても、なんのしこりがないつもりでいても、
突然、武器となって飛び出してくることもある。
そうすると「なにを今更!」「だったらあなただってあのとき!」みたいな
収拾のつかない争いに突入するケースもなきにあらず。

だけど、

〈本来、お互いを思いやって譲り合えば、揉めなくてすむはずじゃないですか〉

はい、正論。
でもそうはいかないのが人間ですね。
「それがあればすごく助かる」ものを目の前に、
簡単にはねのけられるものでもない。
それが自分の正当な権利ならなおさら。
それにその理屈でいえば、「だったらこちらを思ってそっちが引いてよ」と
言ってこられたとしても、とりわけおかしい話ではないともいえる。

要するに、「どこに境界線を引くか」「我をこらえて公正にできるか」が
問題になってくるわけですが、この「公正」っていうのもね。
感情が入ってくるとなかなかね。
だれが介護をしたとか、リフォームの時にお金を出したとか、
誰それは留学したけど自分はしてないからそのぶん足りないとか。
それぞれに理屈があって、主張がある。
きょうだい喧嘩レベルも裁判沙汰になるのが相続。
要するに、善い人だろうがなんだろうが、揉めるものは揉めるのです。

さらには、

〈相続人の配偶者とか子供とか、あるいは余計な知恵を吹きこむ知人とか、
関係者が増えれば増えるほど面倒ですよ。
うちがまさにそう。一度は決着したのに、事業資金が欲しい妹の夫が、
なんのかんの言ってきて、妹も、人が変わったようになってしまって〉

といったケースもある。
そう。「家族」ってそこがむずかしい。
妻の相続するものに、夫も子も口出す権利なんてひとつもないのに、
「家族だから」としゃしゃり出る。
きょうだい同士で納得していたことを「それおかしいぞ!」と横槍を入れる。
そうして揉め事も拡大していく。
そうなってくるともはや「善い人かどうか」なんてまるで関係なくなってきますね。

生まれて初めて、そんな血縁の脆さを目の当たりにしたりんちゃん。
それでも「壊れたくない」と望む彼女が、
家族の危機にどう立ち向かうのか——?

お父さんの行方、隠し子・植田さんの過去と秘密もおりまぜながら、
ミステリー仕立てで展開していくホームドラマ。
ときどき、自分のまわりと重なってどきどきしたり、不安になったり、
はたまた「小説でよかった」「それでもうちは違う」とほっとしたり。

感情をかき乱されながらの怒涛の一気読み、まちがいなしです。

真壁家の相続

『真壁家の相続』朱野帰子
双葉社 1500円(税抜)

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『忍者だけど、OLやってます』KADOKAWA 文庫ダ・ヴィンチmew

 

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About The Author

フリーライター作家橘 もも
講談社X文庫ティーンズハート大賞<佳作>受賞して作家デビュー。

大学卒業後、ダ・ヴィンチ編集部にて雑誌&書籍の編集者として勤務しつつ、作家業を続ける。現在は、フリーでライター・編集業(立花もも)、作家業(橘もも)の二足のわらじ。小説のほかにも、映画やゲームのノベライズ、絵本やノベライズの翻訳などを手掛ける