奇跡的なタイミングで「今この人が隣にいてよかった」とか
「この人の言葉を聴けてよかった」とかってことがあると、
なんとか踏ん張って頑張ろうという気持ちになれるものだなあ、
としみじみしている橘です。例によって弱ってます。
弱ってるんですけど、ちょうど大打撃を受けたそのタイミングで、
とある方々の取材をする機会があり、
お話をしているうちに勇気をもらって
ひどく救われてしまったということがありまして。
もちろん直接わたしの悩みを話したわけではないですし、
打撃そのものが消えたわけでもないのですが、
そういう「一方的に救われる」ことって往々にしてある気がします。
さらにはその帰り道に、重ねて救われたような気持ちにさせてくれた、
オードリー・若林正恭さんのエッセイ
『完全版 社会人大学 人見知り学部 卒業見込』を今回はご紹介したいと思います。
もともと単行本で発売されたときにも読んでいた本なのですが、
今回、未収録原稿を100ページ以上も加え「完全版」として文庫化される、
と聞いてまんまと再び買ってしまったこの本。
ずるいよ……と思いつつも、それだけの価値はありました。
若林さんの繊細で、自意識過剰で、めんどくさいことこの上ないメンタルに、
単行本のときもひどく同調して、
「わかるわかると思っている私はやばいかもしれない」と思ったものですが、
今回はそのとき以上に「うわーんわかるよー若林さんありがとう!」
という気持ちにさせられてしまい、やばくても何でもいいよ!と開き直っております。
スタバでフラペチーノのグランデを注文するのは気恥ずかしくてできないのに、
レンタルビデオ屋でAVを借りるのはまったくてらいもなく堂々としている、
若林さんならではの自意識。
「誰も見てないよっていうけど、俺が見てるんだよ!」という
まさに脱し切れていない中二病のメンタルは、だけど、
たぶん多くの大人が隠しながらも持ち続けているもので、
赤裸々に語り全開にして見せてくれる若林さんに、みんな、
「過剰だよ」と笑う一方でひそかに共感するのだと思います。
売れなかった芸人時代、
誰かに「大丈夫だよ」と言われたかったことに気づいた若林さん。
〈自分では脱け出せない程のネガティブな感情に嵌(はま)った時、
一番初めに起動しなきゃいけないのはやっぱり心だ。〉
〈本当に大丈夫かの信憑性はどうでもいい、まず大丈夫と言う。
そして、言ったことにより生じる責任を、負おう。〉
〈大丈夫と言うことから大丈夫は始まるのだ。〉
そんな言葉の数々に、私はひっそり泣いたのでした。
こうやって私が、全然関係ない誰かの言葉で救われているように、
私の存在や仕事が、友達や知らない誰かの心を救うことがあるといいな、
なんて青臭いことを思いながら。
自分の一番ほしかった言葉をもらう。
そうすることで、相手が特別な人になったり、何気ない本が特別な一冊になったりする。
言葉の力ってすごい。と、改めて感じ入った二月の始まりだったのでした。
『完全版 社会人大学 人見知り学部 卒業見込』
若林正恭 角川文庫 640円(税別)
★拙著発売中です★
『それが神サマ!? 三の巻「悪霊っ?」』
橘もも 講談社青い鳥文庫 620円(税別)
※1〜2巻も発売中です。一応、どこから読んでも楽しめます。
『忍者だけど、OLやってます』
橘もも KADOKAWA MF文庫ダ・ヴィンチmew 600円(税別)